謹啓 時下、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
8月3日4日、学士会館におきまして、現地会場63名、WEB 17名のご参加をいただき、無事盛会のうちに終えることが出来ました。ご参加くださった先生方、協賛をいただいた皆様、心より御礼申し上げます。
今回は、小児神経学の草分けでいらっしゃる瀬川昌也博士の研究を深堀する、というテーマで、トウレット症候群、睡眠、瀬川病の3つを軸に、基礎医学・臨床学の最先端の研究をご講演いただきました。トウレット症候群は原因がわからない難治の疾患ですが、今回の研究会で、前駆衝動といわれる脳がムズムズする感覚に原因があるのではないか、という検討がされました。木村一恵先生より、GatingSEPの異常とメカニズムの考察、寺尾安生先生より、トウレット・チック症児の衝動性眼球運動の異常と少量Lドパ療法の効果について。木田哲郎先生はご自身がトウレット症当事者で、子ども達にCBIT治療を行っておりそのメカニズム、有効性について。木村唯子先生よりDBS治療の有効性と精神合併症に対する注意点をご指導いただきました。当院の当事者が特別参加し、自分の症状について話しフロアーでは先生方と交流がございました。
睡眠については、筑波大学のラザルス教授によるアデノシンと睡眠覚醒リズムの重要性について次々にデータを提示していただきさらに創薬のアイデアをいただきました。諸隈 誠一先生からは、大変興味深い胎児期のレム睡眠のビデオをご提示いただき、レム睡眠の発達に着目することが出来ました。長谷川 恵美先生からは、今大変トピックであるレム・ノンレム睡眠と扁桃体やVTAのドパミン機能についてご指導を頂きました。
1日目の夜、懇親会にて瀬川昌也先生のお嬢様で、世界的バイオリニストの瀬川祥子様に、バッハとクライスラーの素晴らしい演奏をいただきました。大変よい時間を過ごすことが出来ました。
ナイトセッションの2演題も興味深く、ナイトになるにつれ盛り上がるのがJBAGSだなと、改めて感じました。
2日目は、久保田雅也先生より、瀬川昌也先生の幼少時期からの育ちや瀬川理論について瀬川先生の描画等も提示していただきお話を頂きました。新宅治夫先生より、瀬川病発見の経緯プテリジン代謝疾患の発見と治療よりお話し頂きました。一瀬宏先生より、GCH1遺伝子発見の経緯と瀬川病モデルマウスを提示していただきました。塗谷睦生先生より、ドパミンを可視化する試みとアルキンタグの重要性をお話し頂きました。最後に川畑伊知郎先生より、FABP3遺伝子に関するパーキンソン病創薬の知見について学びました。
午後は、約20名で、瀬川邸を見学いたしました。瀬川先生の御仏壇に手を合わせ研究会開催のご報告をいたしました。以前訪れたことがある先生は、大変懐かしがられていらっしゃいました。緑美しい苔庭も散策しながら、暑さを忘れる素晴らしいひと時になりました。
さて、今回の研究会ですが、僭越ながら世話人の先生方から多くのお褒めの言葉を頂戴いたしました。これもひとえに先生方、皆様のご支援ご協力のおかげとクリニックスタッフ一同心より感謝申し上げます。尚、演者の先生方には、メッセージスライドを作成していただきました。参加者の先生方には送付しております。明日からの臨床研究にお役立ていただければ幸いです。
さて、来年は、京都大学ヒト行動進化研究センター統合脳システム分野 松本正幸先生が担当になります。神経基礎研究の歴史も深い犬山にて開催予定です。大変楽しみにしております。
以上、略儀ながら御礼のご挨拶とさせていただきます。
今後ともどうぞご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
末筆となりますが、皆様の益々のご活躍とご健勝を心よりお祈り申し上げます。
謹白
令和6年9月11日
第38回日本大脳基底核研究会 オーガナイザー
昌仁醫修会 瀬川記念小児神経学クリニック 理事長
星野 恭子